ミトリはテントの出入り口に腰掛けて、
ぼんやりとしている。
長い一日だった。
電気羊たちはいつもと変わらず、
のろのろと動き回っていた。
彼らは純粋な生命ではない。
人の手によって創り出されたものだ。
けれどその光景は、
この世界の始まりから変わっていないように思えた。
糸巻き棒でランタンに灯りを点し、
炎を間近に眺めた。
鼻先に熱を感じた。
だいだい色の光が縦横に揺れ、
膨らんでは縮んだ。
火はいつかは消える。
何か商売でも始めよう、
と何の前触れもなしに思い立った。
せっかく電気羊がいるのだ。
育てて売るだけではもったいない。
それからミトリは、
羊たちが皆眠りにつくまで、
新しい生活についてあれこれと思いを巡らせた。
(ナナを捜しに行った日・完)