◇大迫旭洋<熊本県>不思議少年『棘』
面白い。
かなり笑った。
中盤のおばあちゃんのシーン、意味不明ながら、完全にツボだった。
森岡光さんの現代的な雰囲気が非常に良かった。
ああいうのは誰でもできると仰る女子もいるがそんなことないのである。
始まりと終わりが、説明的過ぎるし、くどいと感じた。
◇亀尾佳宏<島根県>雲南市民劇『Takashi』
客席は完全に号泣の空気だったが、僕は引いていた。
きっと今の時代、ああいう愚直さに需要はあるのだろう。
しかし僕には工夫のないお涙頂戴としか思えなかった。
調べれば誰にでも書ける事実を並べた伝記でしかなかった。
◇弦巻啓太<北海道> 弦巻楽団『四月になれば彼女は彼は』
よくわからんかった。
二人が何を目指して芝生に携わっているのか不明……
という構造はある意味リアルなのだが、楽しくはなかった。
繰り返しがしんどい。
◇山下由<東京都>Pityman『アラル』
日程により鑑賞できず。
◇公開審査
何よりこれが一番面白かった。
審査員の意見がかなりバラバラ。
というかほぼ「若手VSご年配」という構図。
僕は若手の言っていることが概ね正しいと思うのだが、
きっとお互い様なのだろう。
とは言え『Takashi』について、
何人かはその題材自体に満足して感動しておられたようで、
(しかもかなりの尺を取って自分の身の上話をする)
「演出家コンクール」の審査会としてはいただけない。
『Takashi』の演出がプロの仕事だったという評価も頷けない。
審査員の一部は現地にて市民劇を観ているということで、
そこでは確かに大人数を上手くさばいていたのかも知れないけれど、
今回の4人はあくまで下北沢で戦っているのである。
過去の業績で加点するのはフェアじゃない。
どうしても「作品」の批評になりがちな中で、
劇団チョコレートケーキの日澤雄介さんだけが、
きちんと「演出」に的を絞って話されていた。
あの人のお話があるかないかで審査会の充実度が全然違った。
個人的には、演劇評論家の村井健さんのお話に最も共鳴した。
つくづくその通りだと思った。
ただ、一点だけ、同意できないところがあった。
『Takashi』はもっと深めればもっと観客の心に刺さるはず、
というお話があったが、
僕はもしそうしたら動員も評判も下がると思う。
残念ながら今の多くの観客は簡易さを求めている。
生活の中に新たな葛藤を持ち込まれるのを嫌う。
泣いてスッキリして忘れてしまいたいのだ。
僕自身はそういう「観客状況」を良くないと思うし、
深く突き刺さって後に残るものを毎公演作ろうとしているし、
うちのお客さんたちは受け止めてくれると信じているけれど。
少なくとも商売として賢明ではない。
食えるほどのお金を作れなければ結局は素人の戯言である。
st.6,7,8