オーディションと選考を終えて、
2013年06月04日
『初めて演劇の舞台に立つ若いあなたへ』への追記を。
あなたが既に、
自分の将来をしっかり見据えていたり、
カラーのはっきりしている劇団や事務所に入っていたりするのなら、
是非そのまま頑張ってください。
漠然とあちこちのオーディションを受けたり、
何となく誘ってくれたところに出たりという方には、
(余計なお世話とは思いますが)気をつけてほしいことがあります。
それは、いつか疲れてしまうかも知れない、ということです。
チケットノルマ(=バイト)に疲れるとか、
少しずつ友達が減っていってそのノルマがさらに重くなるとか、
自分が何を面白いと感じ、何をしたいのかわからなくなるとか、
恋人の方が大切になってしまうとか、
様々なケースが考えられます。
世間一般の「役者=貧乏,売れない」というイメージは、
大体合ってます。
若いうちは頑張れても、
若くなくなってくると、どうしたって心身共に弱気になりがちです。
疲れると、楽しくなくなります。
楽しめないと、お客様を楽しませられる可能性もガクンと下がります。
そうならない為に、憧れを、持ってください。
「こういう役」とか「この役」をやってみたい、という気持ちです。
『ガラスの仮面』でいうところの「紅天女」です。
役者は作家と異なり、自分の脳みそをパカッと開いて見せるようなことはできません。
あくまでも作家が築いた世界の中で戦う人です。
(時にはその世界を内側から支配できてしまうこともあるでしょうが)
ですから、あなたの憧れの役そのものは勿論、
通じるところのあるような役ですら、おいそれとは巡り合えないでしょう。
それでも憧れ続けてください。
「紅天女」とは一つ違う点があり、
それは「更新」されても構わないというところです。
より高尚な憧れを持てるようになるのは成長のあらわれです。
憧れなしで舞台に出続けるのは、
あがりのないすごろくでサイコロを振り続けるようなものです。
疲れる上に、永遠にふりだし付近ということすらあり得ます。
憧れがあれば、疲労が溜まるスピードが少し落ちてくれます。
そして、その憧れは、できるだけ具体的に持ってください。
「自分は主役向きじゃない」という人は大勢います。
それを自覚することは大切です。
しかし、こう言っちゃあ悪いんですが、そんなことはわかっています。
登場人物が10人いたら9人は脇役です。
「主役を支えたい」というのは全然具体的じゃないのです。
また、「主役向きじゃない」という自覚には危険も伴います。
世の中には大変面白い二人芝居・三人芝居がたくさんありますが、
主役属性を最初から捨ててしまうとそういうのを演れなくなります。
『初めて演劇の舞台に立つ若いあなたへ』では、
自分のスペックを把握してくださいと言いましたが、
それは「身の程を知れ」という意味ではありません。
自分のスペックを把握した上で、
「何ができるか」を「何がしたいか」にシフトしていってほしいのです。
ドラクエの喩えで失礼。
今の自分が「戦士」だとして、その特性を活かすなら「賢者」にはなれませんが、
「バトルマスター」になって「がんせきなげ」をしてみたい、という夢が描けます。
パズドラが流行っているのでそっちでも喩えてみますと、
今の自分が「バジリスク」なら、
「碧闇星・ティアマット」にも「輝闇星・ティアマット」にもなれます。
ちなみに僕は作家として、
「強めに捻った歴史物」「大人向けのファンタジー」
を書けると思っているので、
そういうスイングで毎打席ホームランを打ちたいと思っています。
お互い、頑張りましょう。