男性が二人、ボンネットを開けて、難しい顔をしている。
エンストだろうか。
一応僕も免許は持っているが、車のことはさっぱりだ。
アパートの入り口を半分塞ぐように停まっていたので、僕は会釈をしながら半身になって脇を通った。
男性の一人が「すいません」と言った。
僕は家の中から小さな懐中電灯を持って戻り、「良かったら」と言って男性に渡した。
「103のポストに入れといてください」
「イチバンサン?」
その時初めて、彼らが日本人でないことに気づいた。
中国人か韓国人、多分中国人だろう。
この近辺には中国人が多い。
僕はポストを指で示し、部屋に入って寝た。
翌朝、車はいなくなっていた。
ポストを開けてみると、貸した懐中電灯と一緒に、缶コーヒーが入っていた。
それを見て僕は、戦争にはならないでほしいと、心から思った。