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2012年01月06日

射手ムムシュ3

村を出たムムシュは何度か野盗の仲間になったが、
人間関係が煩わしくなり、いつも長続きはしなかった。

しかし噂はすぐに広まった。
凄腕の射手がいる。
どこにも属さず、秘密を漏らすこともない。

やがて、暗殺の依頼が来るようになった。
住みかを転々としても依頼は途切れることがなかった。
密かな殺意は世に溢れていた。

ムムシュは殺したい理由など問わない。
ただ“的”が定められることを喜んだ。

アウカ人が現れてから、依頼はさらに増えた。

依頼人が、国なのか、アウカ人なのか、
あるいは最近まとまり始めた反乱軍とやらなのか。
自分の弓が誰の益になっているのか。
そんなことには一切興味が沸かない。

呼吸をするように、的を射続けた。
posted by 森山智仁 at 22:46| Comment(0) | TrackBack(0) | 小説『太陽の鎖』 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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