人間関係が煩わしくなり、いつも長続きはしなかった。
しかし噂はすぐに広まった。
凄腕の射手がいる。
どこにも属さず、秘密を漏らすこともない。
やがて、暗殺の依頼が来るようになった。
住みかを転々としても依頼は途切れることがなかった。
密かな殺意は世に溢れていた。
ムムシュは殺したい理由など問わない。
ただ“的”が定められることを喜んだ。
アウカ人が現れてから、依頼はさらに増えた。
依頼人が、国なのか、アウカ人なのか、
あるいは最近まとまり始めた反乱軍とやらなのか。
自分の弓が誰の益になっているのか。
そんなことには一切興味が沸かない。
呼吸をするように、的を射続けた。