もうかなり前と言うか丁度去年の今頃なのですが、東京グローブ座で上演されたロイヤル・シェイクスピア・カンパニーの『ヴェニスの商人』について、ふと思い出したネタがあるので今回はその話です。(一部、思い出せないので創作になってる可能性があります)
床も後ろの壁もタイルっぽい感じで、後ろの壁は回転式で開閉します。置きっ放しの装置は特になし。当たり前ですが役者の皆さんは外国人でセリフは全部英語です。語学に堪能な私は、セリフが聞き取れない退屈さのあまりに、ロレンゾーとジェシカの駆け落ちのあたりで決して居眠りなどしていません。外国語で書かれたセリフなのだから、どう上手く訳しても日本人が日本語で対話にするのは難しい、という説があります。確かにそうかも知れないと私は思っていますが、一方で訳文なら訳文の対話があり得ると考えます。特にシェイクスピアなら、一種の詩の詠み合いのように解釈できるのではないか、と。余談ですが、海外作品の訳は新潮文庫が一番うまいような気がします。
で、思い出したネタというのは舞台の話ではなくて、終演後に催されたトークショーでの一コマなのです。役者さんが舞台に座り、インタビュアーがあれこれ尋ねるという形です(あ、この時は通訳さんが訳してくれました。私には不要でしたが)。そして最後、お客さんから質問があればという時、数人のおっさんがそれ来た!って感じで手を挙げました。そして指されたあるおっさんは、席を立ち、次のような質問をしたのです。
「私は演劇をやってる者なんですが、役者さんの立ち位置ってとても重要じゃないですか。で、あ、私も演劇をやってるんですけれども、立ち位置を決めて動くというのはなかなか難しいものですよね。えー、今回の公演では舞台にタイルですか?タイルの模様みたいなのがあるでしょう。もしかしてその模様なんかで立ち位置をお決めになったんですか? あ、実は私普段演劇をやってる者なんですが、はい」
彼が演劇をやっている、ということがよくわかる、大変素晴らしい質問でした。回答者を困惑させる程の鮮やかさでした。
因みに、私の前に座っているおっさんはなかなか指してもらえず、「じゃあ次の方で最後ということで」の時には飛び上がらんばかりの勢いで手を挙げまくり、やっと指してもらえたので、自分の劇団の話だけして質問をしませんでした。本人は質問のつもりだったようです。


