「ロコトといいます」
現れた男は、水塞の頭領だった。
物静かな気配。
涼やかな目元。
アラカチャとは真逆の雰囲気。
だが、決して臆病そうには見えない。
護衛は二人連れていた。
身のこなしだけを見ても相当腕が立つことはわかる。
「驚きました、頭領が直々にお出でになられるとは」
「一人一人の志をきちんと確かめておきたいのです」
話は、巧い。
胸に響く声だった。
努めて冷静に聞いているラブラスも、
やはりこの塞とは争わず手を組むべきではないかと微かに思うところがあった。
横のワカタイなどはすっかりそんな気でいるだろう。
後にわかることだが、
ロコトは確かにこの審問で、
志願兵の意志の強さを確かめていた。
しかしそれは意識の高い者を重用するという仕組みではなく、
むしろその逆で、
目的意識の強い者は遠ざけて鈍らせ、
希薄な者こそ登用して自身の身を固めるという、
この塞の体制を守るには不可欠な慣習なのであった。
2011年06月01日
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