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2014年09月28日

読書:シモーナ・スパラコ著/泉典子訳『誰も知らないわたしたちのこと』

間違いなく読んでおかなければならない一冊であった。
小説だが、決して体験談にひけをとらない。

これは多分完全に男目線で、女性から非難を浴びるかも知れないが、敢えて言うと、
「ピエトロで無理だったら無理」だと思った。

彼は素晴らしい男性だ。
パーフェクトでこそないが、限りなくパーフェクトに近い。
すなわち現実的にはほぼパーフェクト。
そんな彼でさえ、主人公の痛みを共有できず、敵意の的になる。

読者は主人公ルーチェの心情を追っているのであって、
ピエトロ的には「もうたくさんだ」となる負のループも、
ルーチェ的にはやむを得ないことだと理解できる。

しかし、もし自分がピエトロの立場だったらどうだろうか?
彼ほど優しく、辛抱強く、妻の復活を「待てる」だろうか?
(彼は十分過ぎるほど優しくて辛抱強い。
ルーチェの痛みを共有できないのは彼の責任とは言えない。
強いて言えば想像力が少し足りないかも知れないが)
何しろこの小説のように、客観的かつ表現力豊かに、説明してもらえるわけではない。

ピエトロは去ってしまうのだと、終盤ギリギリまで思っていた。
だからタイトルの「わたしたち」とは、
家族三人ではなく、母子二人だけのことなのだと解釈し、戦慄していた。
が、驚くべきことに、ピエトロは戻ってきた。

「男にはわからない」。
そういう非難が、中盤、否応にも読み取れる。
その上で、ピエトロにほとんど非はないと、僕は思う。
もし「彼以上」を世の男性に要求しているのだとしたら、いささか無理がある。

【年内読書59冊目】
posted by 森山智仁 at 05:20| Comment(0) | TrackBack(0) | 読書 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2014年09月25日

読書:小椋一葉著『伝承が語る古代史U 天翔る白鳥ヤマトタケル』

僕にはちょっと難しい本だった。
予備知識に乏しく、地理に弱すぎた。

ただ、ロマンはわかる。
さくっとググるのでなく、自分の足で土地を巡り、史料を見つける喜びも想像できる。

今回、取材旅行どうしようかなあ。

【年内読書58冊目】
posted by 森山智仁 at 08:05| Comment(0) | TrackBack(0) | 読書 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2014年09月24日

読書:野辺明子・加部一彦・横尾京子編『障害をもつ子を産むということ』

何度も涙ぐまされた。
親たちの言葉はやはり重みが違う。

医療の在り方に疑問を投げかける部分が多々ある。
明らかな失言や軽率さ、無知は、単純に避難されるべきことだけれど、
マニュアル化できない事柄も多く、非常に難しい。

例えば「子どもが目立たないように」との配慮について、
感謝する人もいれば、やっぱり隠すべき子なんだとショックを受けたという人もいた。
感じ方は本当に人それぞれなのだ。
誠意さえあればきっとうまくいくみたいなものではない。

【年内読書57冊目】
posted by 森山智仁 at 09:50| Comment(0) | TrackBack(0) | 読書 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

映画:『劇場版 魔法少女まどかマギカ[新編] 叛逆の物語』

一気に観られたし、
概ね納得できたんだけど(鑑賞後に人の考察を読んで補完したりしつつ)、
なーんかすっきりしない。

いや、あれ観て「すっきりした!」っていう人の方が少ないと思うけど、
複雑さとか、終わり方のせいばかりではないような感じがする。

それでちょっと考えてみた。

「努力」がないのだ。
「ロジック」や「思い」はあるし、魅力的な世界観だけれど、
「努力」はない。

覚悟や犠牲さえあれば即、願った通りの結果が得られるという簡易さ。
ゴールドで経験値が買えるようなもの。
魔法の習得や行使にあたり、いわゆる「修行」は必要ないものとなっている。

少年向けバトルマンガじゃねえんだから当たり前なのかも知れないが、
僕としてはそこのところに都合の良さというかリアリティの不足を感じるのである。
本当の世界は、どんな覚悟や犠牲を差し出しても能力を得られない場合があるし、
本来なら、覚悟や犠牲に追加で、大量の時間と労力を支払わなければならない。

本作は「思い」の物語であって魔法は飾りなのだろう。
まどかたちが地道に修行なんかしたら完全に方向性が狂ってしまう。
ただ、本作の構造と現実を見比べた時に、僕は「努力」が欠けていると感じた。
「努力」の大切さに気付かされたとも言える。

言わば「思いの力」で何層も世界を作れたりとか、
人間の業の深さのようなものの比喩表現として優れているとは思うけれど、
ただ左手をそえるだけのシュートだって二万本ぐらい打たなきゃ入るようにならないわけで、
その努力ができたりできなかったりすることの方が深刻な問題ではないだろうか。

【年内映画鑑賞51本目】
posted by 森山智仁 at 09:19| Comment(0) | TrackBack(0) | 映画 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2014年09月23日

殺陣ユニット「バッカナリア」第5回WS開催!

奮ってご参加くださいッッ

≪初級コース≫
●10月28日(火)18:15〜21:15
●10月30日(木)18:15〜21:15
●11月1日(土)13:30〜16:30
剣術・無手・アクロバットの基礎を教えますッ。
初心者歓迎ッ!!

≪中級コース≫
●11月4日(火)18:15〜21:15
●11月6日(木)18:15〜21:15
●11月8日(土)13:30〜16:30
振付を中心に実践的な指導を行いますッ。
舞台での殺陣経験者or初級コース修了者が対象ですッ。

【要項】
◆料金:一般=1回1000円ッ(6回参加の場合5000円ッ)
    24歳以下=1回800円ッ(6回参加の場合4000円ッ)
◆会場:板橋・池袋近辺ッ(お申し込み後にご案内しますッ)
◆お申込み:専用フォームをご利用くださいッ。

【こんな人にオススメッ!】
★今は初心者だけど、いつか動ける舞台俳優になりたいッ!
★アクションに興味はあるけど、練習の仕方がわからないッ!
★長期の殺陣教室に通う時間がないッ!
※プロとして殺陣指導に携わる方はご遠慮くださいッ。

※当ワークショップ参加者は、11月15日(土)に開催される、劇団バッコスの祭『タケルのミコト!』(仮題)アクションメンバーオーディションの参加費が1000円→500円になります。
posted by 森山智仁 at 10:27| Comment(0) | TrackBack(0) | お知らせ | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2014年09月22日

オーディション〆切り迫る!

2015年2月に行う第25回公演へ向けて、オーディションを開催します。

●公演概要
劇団バッコスの祭 第25回公演
『タケルのミコト!』(仮題)
脚本・演出=森山智仁
グリーンフェスタ2015参加作品
2015年2月5日(木)〜11日(水)
シアターグリーン BOX in BOX THEATER

●条件
18歳以上で、責任をもって稽古と公演に参加できる方。
殺陣経験者優遇。
稽古は2014年12月上旬より始まり、平日の18:00〜21:30を中心に、週3〜5回行います。
本番直前は1週間前後、13:30〜21:30の集中稽古があります。
劇場入りは2月3日(火)です。

●日程
9月25日(木)13:30〜16:30
9月26日(金)18:30〜21:30
9月27日(土)13:30〜16:30

●会場
豊島区or板橋区内施設(詳細はお申し込み後に連絡します)

●料金
1000円

●同時募集
今回はアクションシーン多数につき、キャストと別枠でアクションメンバーを4名募集します!
バッコス得意のアクションシーンを一緒に盛り上げましょう!
アクション・アクロバット等、立ち回りを本気でやりたい人、バッコスで殺陣をやるチャンスです。
可能性とやる気重視、男女問わず。奮ってご応募ください。
オーディション……11月15日(土)14:00〜16:00/19:00〜21:00

●申込
メールフォームに必要事項をご記入ください。
〆切は各回2日前の24:00です。
posted by 森山智仁 at 21:22| Comment(0) | TrackBack(0) | お知らせ | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2014年09月20日

映画:稲垣浩監督作品『日本誕生』

1959年の東宝の特撮映画。
ヤマトタケルの物語をほぼ古事記の通りに描いている。
もともと古代の話なのに、その中でさらに創世神話が語られるという二重構造。

長い。
3時間ある。
物語が長いならまだいいのだが、スペクタクルが長い。
殺陣とか嵐、噴火が、マジかよふざけんなってぐらい長い。
古い映画だから仕方ない……のか?

「裸踊り」に敏感に反応するおっさんが超面白い。

【年内映画鑑賞50本目】
posted by 森山智仁 at 17:25| Comment(0) | TrackBack(0) | 映画 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2014年09月19日

映画:北野武監督作品『キッズ・リターン』

いーい映画。
堅実な構成。
サイドストーリーの塩梅もいい。

何より音楽がすごくいい。
メインテーマの旋律がかっこよすぎる。

以前観た『ハリウッド白熱教室』で、
教授が「映画はセリフじゃない」という重要な結論を言っていたが、
北野映画はわかりやすくそれを体感させてくれる。
行間の芸術。

【年内映画鑑賞49本目】
posted by 森山智仁 at 23:29| Comment(0) | TrackBack(0) | 映画 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2014年09月17日

読書:米本昌平・松原洋子・島次郎・市野川容孝著『優生学と人間社会』

人間は感情がある。
しかし感情と理論は適切な距離を保つべきである。
と常々考えている身として、
「優生学=ナチズム」という短絡的な結び付けに批判的な態度を取る本書は、
大変しっくりきた。

らい予防法やナチスばかりが悪者にされがちだが、
優生学は進歩的で実用的な学問として、過去、世界中にあったのだ。
非人道的ではないかという見方は比較的最近のものだ。





『mother』を書いた時、稽古場では相当物議をかもし、
仲間から僕個人の人格を否定するようなことも言われたし、
終演後観客に殴られるぐらいのことも覚悟していたのだが、
それぐらいでなければ、僕が物を書く意味がないと思っている。
まぁ結局『mother』は概ね好意的に受け止められたのだった。

出生前診断等について、改めて自分の親に話を聞きに行ったのだが、
そういうデリケートなテーマを扱おうとすることについて、
案の定、両親は慎重になるよう促してきた。
しかし、デリケートだから触れないというのは、
触らぬ神に祟りなしという発想、つまり逃げである。

一過性のエンタメでは飽き足らない。
人生に食い込むような強烈な一撃を、僕は思い描いている。
(少なくとも自分が観客の時はそういうものを欲している)

しかし、エンタメでもなければならない。
舞台はレポート用紙ではないのだから。

【年内読書56冊目】
posted by 森山智仁 at 06:37| Comment(0) | TrackBack(0) | 読書 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2014年09月15日

読書:大野明子著『「出生前診断」を迷うあなたへ』

つい最近読んだ『プラダー・ウィリー症候群』の著者の長谷川知子さんに、
著者は大きな影響を受けていた。
文献を複数読んでいるとこういうことがままある。
多分どこも広いようで狭い世界なのだろう。

ここで語られていることの多くが「光」の側面である。
ダウン症の赤ちゃんを受け入れられず離婚してしまった奥さんのエピソードがなかったら、
眩し過ぎて正面から受け止められなかっただろう。
「選ばないことを選ぶ」。
ある種信仰じみている、決して悪い意味ではなく。

授かりもの。
大丈夫。
きっと幸せになれる。
けれど、「ショックを受けた」ことは隠さなくていいという。

『mother』のリサーチをしていた時、どういう文献・文脈だったか忘れてしまったが、
「高齢出産に伴う、障害児が生まれるリスクの高さを、医師はきちんと説明すべき」
と、ある女性が主張しているのを読んだ。
その時は「なるほど」と思っただけだったが、
大野氏に言わせればこの「リスク」という表現も不適切なのだろう。
超当たり前だが女性同士でも主張が食い違うことはある。

さて、僕は「闇」の側面も知らなければならない。

【年内読書55冊目】
posted by 森山智仁 at 12:14| Comment(0) | TrackBack(0) | 読書 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

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