小説だが、決して体験談にひけをとらない。
これは多分完全に男目線で、女性から非難を浴びるかも知れないが、敢えて言うと、
「ピエトロで無理だったら無理」だと思った。
彼は素晴らしい男性だ。
パーフェクトでこそないが、限りなくパーフェクトに近い。
すなわち現実的にはほぼパーフェクト。
そんな彼でさえ、主人公の痛みを共有できず、敵意の的になる。
読者は主人公ルーチェの心情を追っているのであって、
ピエトロ的には「もうたくさんだ」となる負のループも、
ルーチェ的にはやむを得ないことだと理解できる。
しかし、もし自分がピエトロの立場だったらどうだろうか?
彼ほど優しく、辛抱強く、妻の復活を「待てる」だろうか?
(彼は十分過ぎるほど優しくて辛抱強い。
ルーチェの痛みを共有できないのは彼の責任とは言えない。
強いて言えば想像力が少し足りないかも知れないが)
何しろこの小説のように、客観的かつ表現力豊かに、説明してもらえるわけではない。
ピエトロは去ってしまうのだと、終盤ギリギリまで思っていた。
だからタイトルの「わたしたち」とは、
家族三人ではなく、母子二人だけのことなのだと解釈し、戦慄していた。
が、驚くべきことに、ピエトロは戻ってきた。
「男にはわからない」。
そういう非難が、中盤、否応にも読み取れる。
その上で、ピエトロにほとんど非はないと、僕は思う。
もし「彼以上」を世の男性に要求しているのだとしたら、いささか無理がある。
【年内読書59冊目】