あるいは当然と思うか。
学生が作り、学生に見せる現代劇なら、
「就活」というテーマを選べば、
ある程度共通した感情が底流にあり、共感を得やすい。
僕は来月で30歳になる。
一緒に演劇をやっている仲間もいれば、結婚した友人もいる。
学生時代より、当然ながら、周りのみんなが多様な生き方をしている。
今回は「女性の生き方」がテーマで、その中に「社会進出」も含まれる。
昔より客層も上下に幅広いし、結構意見の分かれる問題。
「就活」より共感は得にくいだろう。
まず「働くこと」を人生のどこに位置付けるかが人によって全然違う。
賃金を得るだけのものである人もいれば、自己実現と繋がっている人もいる。
実際のところ「社会に進出したい女性」は決して多くはない。
女子大生のうち主婦志望は3割、ゆくゆくは主婦志望を含めれば7割に達するというから、
ざっくり言って「社会に進出したい女性」は5割ぐらいだろうか。
(そもそも進出しにくいのでみんな進出したがらない、というのも大いにある)
今作の主人公はかなり強く社会に進出したがっている。
果たして感情移入してもらえるかどうか、不安はある。
「感動した」、「考えさせられた」、
今までの公演はそういう反応を期待していて、
演劇祭で賞が取れたのは、概ね期待通りの反応が得られたことの結果だった。
今回は一筋縄ではいかないだろう。
何であれ「心を震わせたい」という意志には何ら変わりない。
震えてくれればいい。
例えばそれが、怒りによってでも。
勿論、作者へのではなくて、登場人物への。
劇団バッコスの祭 第23回公演
『Girls, be a mother』