普遍的なものを描いている。
だが、訳者が解説に書いた懐疑的な視線にも強く共感する。
その日その日エサを取ることしか考えない仲間を尻目に、ジョナサンはひたすら飛行訓練を重ねる。
パート1(全部で3)はジョナサンに感情移入できるし、具体的な描写が多い。
ところがだんだんと「わかってる奴同士」だけで喋るようになり、精神的な世界に行ってしまう。
英雄というより宣教師に近い。
「私たち人間はなぜこのような<群れ>を低く見る物語を愛するのだろうか」
千人中千人の読者は群れで生きることしかできないのに。
「大衆的な物語の真の作者は、常に民衆の集団的な無意識であって、
作者はその反射鏡であるか、巫女であるに過ぎない」
訳者の主張はきっと正しい。
単なる商業でない限り、受け手を喜ばせることだけが「作者」の「仕事」ではない。
受け手は「啓蒙」され「開発」され得る。
……という考え方のなんと「ジョナサン的」なことか!
……やはり普遍的なものを描いている。
【年内読書50冊目】