と言えば、高確率でワタミフードサービスが連想される。
とりあえずGoogle検索の関連ワード候補には挙がる。
そのイメージには勿論誇張もあるとは思う。
ワタミ系列のある居酒屋でアルバイトをしたことがあった。
当時の僕は派遣以外のアルバイトをすること自体が初めてで、
見た目も実質も間違いなく「使えないお坊ちゃん」であった。
だから当時、下記のような待遇があったことも、すっかり納得している。
新人研修のオープニングは社長からのビデオレターを見ることだった。
(当時は違和感を覚えつつもそういうものかなと思ったが、
その後のアルバイト経験でそれが特殊な例であることを知った)
ビデオレターはバックルームで観るのだが、
そのバックルームは二畳ほどのスペースしかなく、
「誰かが話しているとテレビの音なんかまるで聞こえない」。
僕がビデオレターを視聴している間、
先輩たちは明らかに意図的と思えるレベルで、
大声で談笑していた。
確かに社長のメッセージには興味がなかったから問題はなかったが、
アルバイト初日、あの先制攻撃には参った。
1.「あいつ使えそうにねーから脅しとけ」と店長から指示があった。
2.「俺らが迷惑するから脅しとこう」という共通認識があった。
3.「社長のビデオなんて意味ねーよな」という仲間意識の表明。
4.特に意図はない。
普通に考えると4.なのだが、
そこそこの確率で2.、
あり得なくはない確率で1.、
だと思っている。
繰り返しになるが、使えないのが悪いのだから、文句はない。
僕が「古参バイト」の立場なら、使えない新人には来てほしくないし、
「店長」なら、「深夜と土日入れる」なら一応取るべきだが、
「案の定使えない奴だった」ら、すぐ辞めてほしい。
企業の目的は利益の追求である。
「人に優しく」している場合ではない。
その原則自体には何ら疑問を差し挟む余地がない、と、
僕は考えている(いた)ので、
先日読んだ『女たちのサバイバル作戦』(上野千鶴子著)に、
すんなりと入っていけないところがあった。
「女はどうせ出産する、つまり退職する」。
そのイメージを、心から「非道い」とは思えなかったのである。
優先すべきは利益。
男女同権は行政の課題であって、
利益を争うことは「方針」ではなく「真理」と感じてしまう。
見る人が見れば僕も「洗脳」されているのだろう。
(上野さんも恐らくそういう読者がいることを見越した上で、
古い体質にしがみついていれば結局「競争」で負けることになる、
という展開をしておられる)
理不尽なだけの「ブラック」なら結局生き残れない。
だが企業側には「忠実で使える奴だけ残ってほしい」という「理」があり、
雇用される側でも「使えないのが悪い」は自明となっている。
だったら何をやっても許される、ではないが、
甘いこと言ってんじゃねぇよ、にも、どうしても説得力がある。
利益の追求は神から与えられた毒リンゴなのかも知れない。
だとしても日本人のほとんどはその誘惑に抗えない。