波打ち際の岩に腰掛けて、海を眺めた。
潮が満ちてきているのに気づいた。
波の先端が少しずつ靴に近づいてくる。
しかし着実にではない。
大きいのが来てオッと思うとまたしばらく静かになる。
そして忘れた頃にさっきのより少し大きいのが来る。
「記録を更新」しなかった波は、名も残さず死んだ志士たちのようだ。
とか、色んなことを考えたような、何も考えていなかったような。
波が迫ってくる様は確かに観察していた。
が、それを志士に喩えるのは、今書きながらしたことである。
覚めたくない夢を見ている気分。
僕は取材に来たのであって、すなわち文章を書かなければならない。
他者に伝わるように、具体的に何かを、書かなければならない。
抽象的な文章は僕より上手い人がいっぱいいる。