卒論であたふたしているうちに話題としてはすっかり古くなってしまったけれども、去る11月30日、シアタートラムで燐光群の『パーマネント・ウェイ』を観た。
客席は舞台を挟み込むようなコの字型になっている。舞台には線路が敷いてあって草とかも生えてて、客席との間はフェンスで区切られている。開演前、場内にはブルーハーツのTrain-Trainのサビが繰り返し流れていてだんだんうんざりしてくる。というのは嘘です。意味のない嘘はやめましょう。本当は列車の走る「がたんがたーん」という音が控え目に延々と聞こえている。
「どっかーん!」(←おジャ魔女どれみではない)と、前触れもなくバカでかい音がして、対岸の客がみんな揃って「びくっ!」となるのを「面白!」とか思った隙に灯かりが落ちる。
劇中、殆んど「対話」はない。つまり人と人が喋らない。登場人物はみんな列車事故の関係者で、大半のセリフは「作者が行ったインタビューでの回答」がそのまま放り出される(と思えてしまう)。序盤だけかと思いきや全然そんなことはなくて全編これでぶっ通す。両隣の客は寝ていた。僕が確認した限り、途中で3人帰った。
舞台があの形だったところがミソだった、と勝手に推測する。(以降すべて仮定だが)序盤は話が専門的過ぎてついていけなかった観客も中盤、被害者たちの証言あたりから、少しずつ舞台に引き込まれていく。息子を亡くした夫婦の言葉などにはぐっと来ちゃったりする。「生存者」と「遺族」との感情の擦れ違いが鮮やかで面白くてコーフンしちゃったりもする。鉄道会社の社長等「悪役」は、ややステレオタイプとも感じられるが、それでも被害者側に感情移入している観客はこれに敵意さえ抱く。しかし人物たちがみんなで蝋燭に火をともす場面を経て「あ、そろそろ終わりかな」と考え始める終盤、なおも事故は繰り返され、証言は続く。「ちょっと長いな」と思う。「あ、今度こそ終わりかな」と何度も思う。ぶっちゃけ飽きてくる。ところが、本当の劇的体験はここに仕組まれている。舞台がコの字なので、顔を上げてみると、対面の客の飽き始めた顔が見えるのである。それはつまり今自分がしている表情である。そして、さっきまでは被害者側に感情移入していたのに、今度はその声を鬱陶しいと思う、悪役側の感情に近いものを体験しているではないか!ということに気付くのである。
なかなか巧妙ではないか……というのは、やはり深読みし過ぎているかも知れない。でも観て良かった。でも今後、何か観に行こうと誘われた時「どんなの脚本?」と聞いて「『パーマネント・ウェイ』みたいなの」と言われたらちょっと行きたくない。でも観て良かった。演劇はそれでいいと思う。
★★★☆☆


